サービス残業は、労働基準法に過料を導入することでなくなる

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 働き方改革の本筋は
http://npn.co.jp/sp/article/detail/42097808/
森永卓郎さんのご意見。

中盤の議論はさておいて、「違法なサービス残業をなくせば、企業が残業代をケチって、長時間労働もなくなるだろう」という結びには同意します。
僕も、監督官の採用試験の時に、「長時間労働を直接取り締まる方法はないけど、サービス残業をなくすことで、間接的に労働時間を減らすことはできる」みたいなことを、面接官に熱っぽく語った覚えがあります。
(一応それで試験は受かりました)

また、「長時間労働を行わせている会社では、残業代の不払い(サービス残業)も同時に起こっている傾向にある」ことも、厚生労働省の調査で明らかになっています。

ですので、おそらく理屈は間違っていないはず。

しかし、現状、日本国内では、残業代の不払い(労基法第37条違反)が蔓延しています。

その理由として、よく説明されるのは、労働基準監督官などの、労働基準行政に関わる人員の不足です。
これは現場にいた人間の実感としても、間違いありません。
圧倒的に人が不足している。
人員が足りないので、安倍首相が「労働基準監督官の数を増やす」と言ったり、その結果、「いや、予算的に難しいぞ」「民間に委託したらどうか?」などの議論が盛んになっている訳です。

しかし、サービス残業の蔓延が、取り締まる人の不足のみにあるとすると、もう一つの視点を見失うことがあるかもしれません。
もう一つの視点とは、企業が自主的に法律を遵守することです。

「労基法なんか守ってたら、会社が潰れてしまう」
飽くまで主観ですが、こういう考えを持った経営者は少なくないのではないかと思います。

これを、
「労基法を守らないと、会社が潰れてしまう」
という意識に変えることができれば、労基法違反は自然に減っていくはずです。

例えば、「脱税をしてやろう」という会社があまり見られない(節税はする必要があるけど)のは、税法を守らないことが、会社にとって恐ろしいことだからです。

じゃあ、どうやったら「労基法を守らないといけない」と、会社が思うんでしょうか。

現状では、サービス残業をさせた方が、経営的に得をする構造ができてしまっている。

この構造を壊すためには、労基法に過料を導入することが妥当だと僕は思います。

過料は、道路交通法で言えば、スピード違反で警察官に捕まった時に払う反則金みたいなものです。

労基法違反でも過料を科す。
例えば、ちょろまかした残業代の1.5倍の金額とか、企業規模に応じて、一律に10万円とか100万円の過料を科せば、サービス残業は、企業にとってリスクになるはずです。

もちろん、過料があるからといって全ての法律違反がなくなる訳ではなく、上述のスピード違反の例のように、全くお構いなしに夜道を爆走する車もあります。
しかしそれでも、僕のような気の弱いドライバー(人はそれを優良ドライバーと呼ぶ)に、「免停になったら困るし、減点されるのも嫌だから、スピードを落として運転しよう」と思わせるほどの効果はあります。

現行の法制度であっても、労働基準法は、刑法的な側面を持った法律なので、法律の該当条文を守らなかった会社は、刑罰を科せられる可能性があります。
しかし、社内外から、労基法違反の可能性が多く指摘される中、周囲から「労基法を守らなくて罰金された」という話はあまり聞かないんじゃないかと思います。

この、見えない法違反の事実と、現実のギャップを埋めるのは、「過料」じゃないかと僕は考えます。

もちろん、規制が増えるのは、自由な社会にとって望ましいことではありません。
しかし「働かせた分の給料を払う」という、当たり前のルールが守られてこそ、働き方やワークライフバランスの議論も進むのではないかと思うのです。